経済・政治・国際 | 2010/11/06
尖閣ビデオの漏洩は、個人の責任の問題はさておき、政府の情報管理のまずさを明らかにするものであることには変わりません。しかし、外交面に関して言うと、漏洩そのものより、漏洩後の対応の方がずっとずっと問題だと思うのです。
たとえば、この問題に関するワシントンポストの記事から、日本と中国の政府関係者の発言を抜粋して翻訳すると以下のようになります。とにかく読んでみてください。
仙谷由人内閣官房長官は、事件の取り調べの証拠物件であるビデオのリークは、「予期せぬ由々しい事態」と述べ、中国から外交ルートを通して、問い合わせを受けていることも明らかにした。
四方敬之(しかたのりゆき)内閣副広報官は、「日本政府は今の時点ではビデオを公開するべきではないと思う。総理は今回の事件への調査を指示しているが、今のところ本物であるという確認はできていない」述べた。
前原誠司外務大臣は「仮に政府の情報が流出したということであれば、これは事件として扱わなければいけない」と、衆議院外務委員会で述べた。
中国は、ビデオは、日本が漁船の船長を不当に逮捕したという見解を変えることはないと述べている。馬朝旭中国外交部報道局長は、同部のWebサイトにおいて「いわゆるビデオでは、真実を変えることはできないし、日本の違法な行為を覆い隠すこともできない」というコメントを発表している。
Purported video behind China-Japan clash leaked/The Washington Post
どんな印象を持ったでしょうか?日本のネットでは、「これで日本の正しさが証明された」という意見で持ちきりですが、国際政治の舞台では、「ビデオの公開に恐れおののく日本、自信たっぷりの中国」という構図になっています。政府のコメントがそのようなものばかりなのだから、当然のことです。「謙虚に対応しておけば、客観的に見て、どちらが正しいか判断してくれる」と言うのは日本人の甘えでしょう。
本来なら、政府首脳の誰かが「ビデオの公開には問題もあるが、結果として、日本の正しさが証明されて良かった面もある」この一言を言うべきでした。でも、誰も言えなかったのです。理由は分かりません。密約を守るためなのか、単に中国に媚びているだけなのか…。しかし、いずれにせよ、一般の国民から見たら「中国のご機嫌取りをしている」と思われても仕方ありません。
まぁ、そんなところです。これ以上書いても怒りにしかならないので、このくらいにしておくことにします。
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国民にこのような形でリークされたのはともかく、このビデオはもっと早く公開されるべきものではあったので、事後うんぬんでなく、ビデオの使い方がそもそもおかしかったつけがでているだけかと。
たかが、実際の衝突?はどんな状況だったのかを判断する証拠の一つにすぎないのに、何で隠した?
普通に考えて、日本に不利な映像があるからか?とか思われるだけですし。
いまさら出してもそれが日本に有利な映像であっても、じゃあ何でこれまださなかった? 編集・ねつ造でもしてた?となるだけで。
管理人より:お久しぶりです。コメントありがとうございます。
正直、自分は「ビデオでは責任が曖昧だから、あえて隠していた」のではないかと思っていたのです。そういう心配をしていた人は少なくなかったのではないでしょうか。ただ、映像を見てみると杞憂でしたね。分かりづらいという面もあるにせよ、よく見れば分かる話です。あらためて、公開しなかった理由が問われるという側面もあると思います。