経済・政治・国際 | 2010/11/27
延坪島(ヨンピョンド)砲撃事件で、日本のマスメディアより、中国系のメディアの方が客観的な報道をしているという不思議な現象が起きています。以下は、事件の二日後、25日のサーチナニュースの記事です。
新華社や北京晨報など中国メディアは25日、朝鮮半島で23日に発生した南北双方の砲撃戦について「韓国側が、先に発砲したと認めた」とする記事を発表しはじめた。韓国が軍事演習として、北朝鮮と「支配問題」で対立している海域に砲弾を撃ち込んだことを指す。
朝鮮半島停戦の1953年、国連側は海上における韓国と北朝鮮の軍事境界線として朝鮮半島西側の海域に北方限界線(NLL)を設定した。実質的には、米国と韓国の「西側」が一方的に設定したものだ。北朝鮮側は認めず、1999年になり、NLLより南側に「海上軍事境界線」を設定した。南北双方が主張する領域が一部で重なり、「争議ある海域」が発生することになった。
北朝鮮側は22日、韓国側に対し、「争議ある海域」付近での軍事演習を中止するよう要請。韓国側は拒絶した。韓国の政府関係者は名を秘すことを条件に「わが方の砲弾は、争議ある海域に落下した。ただし、北朝鮮の海岸には届いていない」と述べた。同説明は、北朝鮮軍が発表した「韓国側が先に、わが領海に数十発の砲弾を撃ち込んだ」との声明に合致する。
ちょっと補足すると、延坪島は北朝鮮が主張する海上軍事境界線より北側、韓国が主張する北方限界線(NLL)の南側にあり、南北がともに支配を主張する地域なのです。ただし、実効支配しているのは韓国側。こういう複雑な地域で、米韓が軍事演習をしたことに、北朝鮮が反発したと見ることができます。
イメージとしては、韓国が実効支配する竹島周辺で韓国軍が軍事演習し、そこに日本が砲撃を仕掛けた…。こんな状況でしょうか。たしかに、やり過ぎだと思いますが、「挑発したのはどちらが先か」となると、難しい問題です。
延坪島の事件についても、先に挑発したのは米韓側だったという主張を完全に否定するのは難しいでしょう。もちろん、北朝鮮側の対抗措置が、「民間人居住地域への砲撃」であることに対する批判はあるだろうし、そもそも北朝鮮側の海上軍事境界線が適切かという議論はあります。ただ、こうした状況説明を一切なしに、「何もしていないのに、突然、北朝鮮側が攻撃してきた」かのように説明するのは、あまりにも一方的なものです。
ところが、日本の大手メディアは、一方的に韓国側の立場を報道をするばかりで、北朝鮮側の主張をほとんど報道していきません。さすがに、西日本新聞、日経BP、産経等の例外はありますが、いずれも記事としての扱いは非常に小さく、ほとんどの記事で、韓国側による「北方限界線」が唯一の軍事境界線であるかのような書き方がされています。
別に、北朝鮮側を支援するつもりはありません。私個人としては、友好国である米国・韓国による軍事的挑発は有意義なものだったのではないかと思っているし、これをきっかけにした事態の打開も期待しています。ただ、それも、正しい状況判断があってこその話であり、一方的な報道だけでは何とも判断できません。
報道の自由が保障されている日本において、厳しい報道規制が敷かれている中国系のメディアからの情報に頼らざるをえない事実。このことこそ、メディアの危機管理の問題として、真剣に議論しなければいけない問題ではないかと思います。
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偏向とまでは言えるかですが、報道にややバイアスがかかっているのはお書きになったとおりでしょう。
ただ、切り口・視点の相違か、判断による省略か、偏向か、は難しいところです。
「北朝鮮 過去 挑発」とかでググればここ20年以内で結構な数の挑発行為があったわけですが、そうした点もまた報道されていないです。
ここらは、各メディアが多様な切り口・視点で報道することで補われるべき部分だとすれば、視点の多様性がないことが問題なのかも。
管理人より:おっしゃる通りですね。特に最後の部分は大事だと思います。日本のメディアは、中立を謳うあまり、すべてのメディアが単一の視点でしか報道しません。要するにこれが「偏向」と言われている事態ではないかと思っています。
エジプト報道で、朝日と毎日がすごい件
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情報学ブログさんのコメント
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仰っている事の意味がよくわかりません。
日本のマスコミ報道が一方的というのは、形式論にすぎると思います。
韓国が砲撃前に演習していたことも報道されているし、北朝鮮独自の境界線があることも報道されています。
韓国の砲撃が本事件の前であったとしても、北朝鮮の民家に打ち込んだわけではないのですから、北朝鮮の対応は明らかに過剰反応といわざるをえない。
報道は、このあたりは自明として、ある意味省略したにすぎないと言えます。省略せずに、まずは韓国・北朝鮮に偏らず、これらの立場を平等にして話を始めるのは、裁判等ではそうでしょうが、時間的制約の多い報道にそこまで求めるのは形式論にすぎるということです。
話はとびますが、尖閣ビデオをスクープしなかったことの方が、日本マスコミの問題でしょう。もしも、早い時期にスクープしていたら、今回の北朝鮮の砲撃もなかったかもしれません。
管理人より:全く報道されていないわけではないことは、本文にも書いています。扱いが小さすぎてミスリーディングだと言うのが本文の趣旨です。北朝鮮の砲撃を擁護するわけではありませんが、本来、「北朝鮮のことだから、挑発すれば、挑発に乗ってくるかもしれない」くらいの予想は立っていたはず。それにもかかわらず挑発したことの「戦略的意義」は問われます
韓国側が主張する軍事境界線の南側で軍事演習をしていたと言う報道は多くありますが、「北朝鮮の主張する軍事境界線の北側でもある」と公平な記述をしている記事はほとんどありません。このフレーズを追記するのが、そんなに手間でしょうか?あなた自身はご存じの上で書いているので、いいと思うのですが、どの程度の国民が真実を知っているかは疑問です