ニュース | 2009/11/28
事業仕分けでスーパーコンピュータ等、一部の科学技術予算が削減されることをマスコミでは頻繁に問題にしています。これに関して、東京大学では、毎週のように討論会、説明会の案内が送られてきており、かなり神経質な対応をしていることが分かります。要するに、これは自分の所属組織の利害にもかかわる問題で発言しづらいのですが、少し思ったことを書こうと思います。
結論を先に言います。物理学等、他の方面の科学研究予算については分かりませんが、少なくともスーパーコンピュータに関してはすでに「時代遅れ」で、今さらこんなものが国家予算としてついていること自体不思議です。事業仕分けの対象となって当然の事案です。
コンピュータの処理能力を高めるのにはいくつかの方法があります。一つは、単一のコンピュータの処理能力を高める方法で、もう一つはコンピュータの処理を分散する方法です。このうち前者の極端なケースがスーパーコンピュータと呼ばれ、後者はグリッドコンピューティングと言われます。ところが、現在、コンピュータに関する研究開発は、単一のコンピュータの処理能力を高める方向よりも、複数のコンピュータに分散処理させる方に急速に軸足を移しつつあるのです。Webサービスは完全にグリッドコンピューティングの発想で行われるようになっているし、企業の基幹業務に使われるコンピュータもグリッドコンピューティングの考え方を取り入れたものになってきています。こうなると、もはや「スーパーコンピュータ」は時代遅れの技術です。ここに多額の国家予算を費やすことの意義は失われているのです。
たしかに、スーパーコンピュータは、単一のコンピュータに多くの処理を押し込めるという極端な環境において研究開発を行おうとするプロジェクトであり、その成果が、他の分野に活かされるという面もあります。しかし、日本はこの分野では、すでに高い競争力を持っていると言える状況ではなく、今後のイニシアチブを期待できる分野ではないのです。「時代遅れの技術」であり、さらに「今後の事業性にも疑問」こういう開発プロジェクトに多額の国家予算を使うことにどれだけの意義があるのでしょうか。むしろ「選択と集中」の立場から、今後の期待が持てるより重要なプロジェクトに予算を振り向けるのが当然でしょう。
情報技術の動向に詳しくない人が、スーパーコンピュータを情報技術開発の主流と勘違いして、予算削減に反対しているケースが良く見られますが、ちょっと見当違いの議論ではないかと思っています。
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