ニュース | 2009/02/26
三笠フーズの問題で、非常に高い発がん性を持つ猛毒であるアフラトキシンを含む輸入米が不当に横流しされていたことが話題になりました。しかし、実は、三笠フーズのような不正ルートだけではなく、正規ルートで販売された輸入米にもアフラトキシンの問題が起きていたことが明らかになりました。時間を追って状況を説明すると以下のようになります。
1. 昨年の10月、農水省の検査を経て、正規ルートで販売された輸入米から、アフラトキシンを含むカビが発見された。この段階で、農水省は、暫定的な「目視による検査」と「今後の対応の検討」が発表される(2008月12月19日 プレスリリース)(翌日の朝刊で各新聞社が報道)
2. 二ヶ月後、政府から従来では考えられないような非常に厳しい検査の方針が打ち出された。ただ、その理由は示されず、不可解とまで思われた(2009年2月19日 プレスリリース)
3. その後、衆院予算委員会の当日(注1)、1による担当官の目視による検査で大量のカビ米が発見されたことが明らかになった。このことから、1以前は、大量のカビ米が適切な検査を受けずに消費者に渡っていたと予想される(2009年2月25日)(報道は産経一社のみ)
要するに、今まで、大量のカビ米が、(三笠フーズのような不正ルートではなく)正規ルートで大量に販売されていた可能性がきわめて高いということが明らかになったわけです。その中にはアフラトキシンで汚染されている輸入米も含まれていたと思われます。100%農水省の責任だということを考えると、三笠フーズの問題以上に大きな問題とも言えるのです。
誤解のないように言うと、現在までに検出されたアフラトキシンの濃度はそれほど高くはありません。最初の報告でアフラトキシンが検出されたのはカビの塊であり濃度は40ppb(基準は10ppb)です。カビの塊を取り除けば、それほど多くのアフラトキシンがあるわけではないことが予想されます。2月19日の農水省の発表によれば、今後はカビを含んだ米は全て廃棄するということですので、その点でも問題はないでしょう。
さて、ある意味で「終わった」とも言える今回の問題ですが、気になるのがマスコミ報道です。上に示した流れの中で、2よりも3を後に持ってきたことで、結果として「マスコミに騒がれないで済んだ」のではないかと思うからです。実は2の対策を打ち出された時点で、神経質とも言えるほど厳重な対応がなされており、「どうしてここまで?」というのが正直な気持ちでした。ところが、後になって3の情報が出てきてみると、たしかに「このくらいやらないと国民が納得しないと思ったのだろう」と言うことが分かります。そのくらい大きな問題だからです。要するに、今回の問題に関して、農水省はデータを出すのを先延ばしにし、その間に厳しい対策を提案することで、「マスコミに騒がれないで済む」ことを狙ったのであり、結果としてその目的を達成したのではないかと思うのです。
しかし、マスコミ側の対応として本当にそれで良かったのかは疑問です。単にマスコミの調査能力がないだけなのか、それとも記者クラブを通して癒着していて報道できないのかは分かりませんが、いずれにせよ、これほど大きな問題、しかも政府のプレスリリースだけを見ても分かるような問題が全く騒がれないで済んでいるということに、何か気持ち悪いものを感じるのは自分だけでしょうか。
―謝辞―
ちなみに、この件は、2/24にある読者の方からいただいた連絡をきっかけとして知りました。この場を借りてお礼を申し上げます。
注1
衆院予算委員会でこの問題が取り上げられた当日の報道であり、予算委員会の答弁が情報源ではないかと思います。ただ、自分がこの記事を書いた時点で会議録が公開されていないため、答弁が情報源なのか、あるいは産経の独自取材が情報源なのかは分かりません。これについては会議録が公表されれば分かる話なので、この場で追って書かせてもらいます。
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