ニュース | 2008/09/13
今回の汚染米問題ではさまざまな種類の汚染米が取り上げられています。しかし、その中には「それほど騒ぐまでもないようなこと」「非常に危険なこと」が混ざっており、それを切り分けて考えないといけないのも事実です。
結論から言えば、今回の問題でもっとも注目されるべきなのはアフラトキシンによる汚染であり、それに比べればそれ以外の汚染のリスクははるかに小さいと言えます。ところが、農水省やマスコミはそのことには触れず、アフラトキシン以外の汚染米に関する情報ばかりを流しています。これでは、「国民の目を欺いているのではないか」と疑われても仕方ないでしょう。
○焼酎については蒸留されるので事実上問題ない
焼酎の場合、「共沸」というメカニズムで若干製品に残る可能性はあるが、極端に薄められることになるので、健康被害は考えにくいのです。特にアフラトキシンは、融点が200℃以上と高いため、共沸する量はかなり少ないと思われます。
ただ、「少ない」とは言っても、やってみないと分かりません。実験をするのはそれほど難しくないわけですから、早急に実験結果をまとめ安全宣言を出すべきだと思います。
(追記)めざまし土曜日という番組中で、アフラトキシンに関して、これに類する実験が行われたようです。直接見ていないのですが、伝わってきたデータの表記の仕方からして、共沸の影響が1/100以下というレベルの精度の実験と言えるでしょう。この程度なら、実験をする前から分かっているのに加え、きちんとした科学的手続きが踏まれていないので、理論的にはほとんど意味がないと思います。きちんとした条件で実験すれば、1/10000~100000というような非常に精度の高いレベルで安全性を確認できるはずなので、どこかの研究機関でこういった検証をすると良いと思うのですが…。
今の日本はこういった研究を評価する雰囲気ではないということが、もう一つの問題としてあるのかもしれません。
○メタミドホスはそもそも健康被害をもたらす量ではない
メタミドボスは、もともと低濃度で作用するような物資ではなく、規制値はかなり厳しく設定されています。実際に健康被害をもたらすかどうかというより、何かの拍子に間違って大量に混入するということを防ぐための設定と考えた方が良さそうです。その上、報道されているように、時間が経つと分解する性質もあります。
したがって、農水省の発表の通りなら、米飯として食べたとしても大した問題ではありません。もちろん、検査そのものの信憑性はあるので絶対とは言えませんが、ただちに危ないということにはならないでしょう。
特に、焼酎の製品への混入に関しては完全に無視して良いレベルではないかと思います
○問題は「焼酎以外に利用されたアフラトキシン汚染米」
要するに、上の二つ以外の汚染米が「危険」ということになります。それは、ずばり、「焼酎以外に利用されたアフラトキシン汚染米」です。
アフラトキシンは非常に高い発がん性を持つ物質であり、一応、規制値が設定されているものの、「規制値以下でもできる限り摂取しない方が良い」と言われている物質です。そのアフラトキシンが規制値を超えているのですから、問題がないはずがありません。
しかも、アフラトキシンは非常に分解しづらいため、高温で熱してもほとんど分解せず、家畜の飼料として使われても肉に残るから危険と言われている物質です。要するに、絶対にあってはいけないのが「アフラトキシン汚染米」だったのです。
今回の事故米騒動を見るとき、さまざまな情報が錯綜しているように思えるのですが、もともと「焼酎以外に利用されたアフラトキシン汚染米」以外は大した問題ではありません。「焼酎以外に利用されたアフラトキシン汚染米」に絞ってこの問題を考えていくことが、問題を整理する上でも不可欠なのです。
○「何かを隠している」という疑念
ところが、農水省から出てくる情報は、メタミドホス等、他の種類の汚染米についてのものがメインであり、アフラトキシンに関する情報はほとんど出てきません。焼酎メーカーに販売されたアフラトキシン汚染米がどの程度で、それ以外にどの程度の汚染米があるのか、そういう基本的な情報ですら隠蔽されているのです。
ネット上ではすでに、「政府やマスコミは、アフラトキシンの問題を隠すために、メタミドホスに関する情報ばかりを流している」という声が聞かれます。毒性の強さの違いからすれば、これは全くもって自然な反応でしょう。
雪印や不二家の問題以来、消費者の信頼を傷つけるような不祥事は、「何か隠している」という印象を与えないことが重要だと言われるようになりました。しかし、今回の問題に対する農水省の対応は、まさに「隠している」「まだまだ出てくる」という印象を植え続け続けていることになります。これでは、汚染米はもちろん、コメ全体、さらには食品行政全体への信頼を失わせることになります。
今回の問題は、船場吉兆やミートホープの問題と違い、国の当事者としての関与が非常に高いという面で、ずば抜けていると言えます。農水省の方に置かれましては、「社保庁と同じように農水省も解体するべき」という意見が広がる前に、「まともな食品行政」をなさることを強くおすすめする次第です。
固定リンク | コメント(4件) | トラックバック(0件)
どうもありがとうございます。
ただ、2ちゃんねるでは「常識」だし、
きちんと書かれているブロガーも多いと思います。
> ここまでネットで加熱したのは情報が偏ってるせいで
> その意味では報道被害・風評被害ですね・・・
本当にそうですね。
アフラトキシンの危険性は、
あくまで「そういう可能性もある」ということであり、
きちんとした情報があれば安心できるはずなんです。
ただ、マスコミも政府も情報を出さないので、
「何か重要な情報を隠しているのではないか」
という疑念をみんなが持ち初めているというのが現状でしょう。
単純に言って、食品行政が破綻してしまっているわけですよ。
本文にも皮肉っぽく書きましたが、
冗談抜きで農水省を解体して、別の役所を作るくらいじゃないと無理なのかもしれません。
たゆまぬ改訂ありがとうございます。
総説の文献情報を投稿したものです。
今回の事件では意図的ととれる報道が見られますが、逆に2chなどでは草の根でも意図的に無視されている情報がひとつあります。
それは、AFB1検出米の売却データです。
今回の農水省の行為や対応は非難するに値しますが、少なくとも検査され、問題のあった入札業者に渡された事故米の内訳はきちんと発表されております。
以下の資料からすくなくとも(株)浅井、太田産業(株)ルートにはAFB1検出米は流出してないのですが、浅井→ノノガキ経由でアフラトキシンが人の口に入ったと流布する輩がいるようです。選挙前なので元情報にあたらない人たちの不安をあおり、特定政党を持ち上げたり攻撃したりするのに使われているようにもみえます。
http://www.maff.go.jp/j/press/soushoku/syoryu/080910_2.html
(別紙1)株式会社浅井に販売した非食用事故米穀(PDF:17KB)
(別紙3)太田産業株式会社に販売した非食用事故米穀(PDF:11KB)
情報ブログさんのようにきちんと科学的に検証していただけるところが頼りです。これからもよろしくお願いたします。
とりあえず報道通りならそのルートは問題なさそうですね。
主要な問題点としては、
1.三笠経由の10tが、すべて焼酎用だったのか
2.「第4のルート」はあるのか。
ということではないかと思います。
まぁ、政治と言うことに関して言えば、
汚染米の流通の度合いにかかわらず、
今回の事件は、今の自民党=公明党政治が破綻しているということの
証左以外の何者でもないでしょう。
日本政府は特殊法人によるものを含め、
米と小麦(要するに穀物のほとんど)の輸入を完全独占していること、
行政の意識の問題の背景には、
戦後の日本政治の問題そのものがあると言って良さそうです。
これを、「攻撃」というのはかなり無理があるのではないでしょうか。
まぁ、これは別に民主党が政権を取れば良くなるとか、
そういうことを意味するわけではありませんが…。
ちなみに、他の食品におけるアフラトキシン汚染と比べ、
今回の事故米によるアフラトキシン汚染がそれほど大きな問題ないという視点からの議論を、
以前の記事(「アフラトキシンの毒性をまとめてみた」の追記しておきました。
エジプト報道で、朝日と毎日がすごい件
に対する
情報学ブログさんのコメント
硫化水素自殺って楽に死ねるんだろうか?
に対する
真実さんのコメント
大学に市場原理を導入する方法
に対する
北風mk-2さんのコメント
八百長力士を処分するべきなのか?
(2011/02/05)
ロシア大使更迭経緯の流出は誰のリークか?
(2010/12/24)
大学に市場原理を導入する方法
(2010/12/23)
サンデルの政治哲学と日本の戦争責任問題
(2010/12/12)
負の所得税としての子ども手当
(2010/12/11)
初めてこのパニックで同じ意見の人を見つけた
しかも冷静な文章で解り易い、発端は事故米でしょうが
ここまでネットで加熱したのは情報が偏ってるせいで
その意味では報道被害・風評被害ですね・・・