ニュース | 2008/03/19
ある場所で私信の無断公表が可能かという議論があったので、それについてちょっと記事を書きます。結論から言うと、これは「ケースバイケース」ということになるのではないかと思います。
私信の無断公表に関しては、以下の判決が有名です。
私信無断掲載事件
平成8年4月26日
高松高裁 平成5年(ネ)第402号 損害賠償請求控訴、同付帯控訴事件
http://www.translan.com/jucc/precedent-1996-04-26.html
詳細はリンク先 or 検索エンジン等で調べてもらうとして、結論としては、「この場合、私信は著作物に当たらないので公表権の侵害にはならないが、プライバシーの侵害とは言える」という判決です。
ここで著作物に当たらないというのは、この私信に関する個別の判断ですので、公表権の侵害になる可能性が排除されたわけではありません。イラストや小説などの著作物の場合、私信でもプライバシー権が成立しないケースが多いと思われますので、この場合は公表権の方で対処されることになるでしょう。
で、何が問題かというと、私信の公表が、「著作物ではなく」かつ「プライバシー権の侵害にも当たらない」ケースが存在するかということです。これについて断定するようなことを言えるほどの知識は持ち合わせいないのですが、一般に、プライバシー権は、社会的な重要性なども考慮して決められるものなので、おそらく、そういうケースは存在するのではないかと思います。極端な話、政治家から送られてきた社会的に重要な問題についての私信を報道目的で公表することは問題ないと考えられるのではないでしょうか。
結局、問題はこうした「著作物ではなく」「プライバシー権の侵害にも当たらない」という判断がどこまで適用されるかということです。これについてはおそらく判例を待つしかないということになるのではないかと思います。
詳しい方、どなたか教えてください
ちなみに以上の議論は、著作財産権上の問題、つまり正当な引用な条件等はクリアしていることを前提にしています。
○もとになった議論
http://www.cm.kj.yamagata-u.ac.jp/blog/index.php?logid=7608
○追記
記事を書いてから初めて気づいたのですが、このブログを書いているのは、「水商売ウォッチング」で有名な天羽優子さんということが分かり、びっくりしました。自分の研究に閉じこもって社会的責任を果たそうとしない科学者が多い中、天羽さんの真摯な姿勢には見習うことが多いのではないかと思っています。
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こんばんは。
私信の公開ですが、おっしゃる通りケースバイケースだと思います。たとえば、作家が長々と書きつづったものであれば、私信であっても著作物となるかもしれませんし、同時に公開するとプライバシーの侵害の問題も発生するかもしれません。
一方、誰が書いても同じ文面になる事務連絡のようなものは、公開するとプライバシーの侵害になることがあるかもしれませんが、著作物と判断される可能性は少ないように思います。
また、私信かどうかは、当事者の人間関係によっても決まってくるのではないでしょうか。人間関係が無く内容も事務的だと、おそらく私信性はなさそうですが、人間関係が無かったのに一方的に個人の状況を詳しく書いておくって来られる方もいまして、不用意な行動だとは思いますが、私の方では私信として取り扱っています(実際、相談メールが来ることがあるのですよ)。