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アップルが文化庁と対決姿勢

経済・政治・国際 | 2007/06/14

私的録音に関する著作権者への補償金支払いをiPodなどのデジタルオーディオプレーヤーにも義務づけようとする、いわゆる「iPod課金問題」に対し、アップルジャパンが内閣官房に提出した意見書の全文が首相官邸のサイトに公開された。アップルはこの制度には科学的根拠がないとして、即時撤廃すべきと強く主張している。

アップル、文化庁を激しく非難--「私的録音録画補償金制度は即時撤廃すべき」/CNET JAPAN
http://japan.cnet.com/news/tech/story/0,2000056025,20350151,00.htm

アップルのパブリックコメントが話題です。原典がPDF形式なので、htmlとして全文引用しておきます。著作権についてそれなりに気にしている自分からすると、32条第2項の規定にしたがって、「転載」できるというのは、かごから出された鳥のような気分で、とても気持ちがいい。いつかやってみたかった(笑)。

普通ならまとめや、コメントをするところなのですが、元の文章が短くまとまりすぎていて、まとめようがないのです。いつも長文の「情報学ブログ」を読み慣れている読者の皆様には、余計なまとめをするより、そのまま読んでいただく方が良いでしょう。若干、日本語が変な気もするのですが、無駄のない議論で読み応えがあります。特に、末尾の以下の部分がすごい。

平成19 年3 月27 日、文化審議会 著作権分科会私的録音録画小委員会にても多くの小委員会委員が補償金制度の必要性の根幹の議論提示をしたにも関わらず、作為的に「私的録音録画問題に関する検討の進め方(案)」から削除するなど鼻から「結論ありき」の審議会運営をする著作権事務局には真摯な姿勢は微塵も感じられず、もはや公平公正な著作権行政を運営する適切な省庁とは言い難く、速やかに著作権行政を他の省庁に移管することを強く望む

私的録音補償金制度はおかしな制度であり、文化庁の姿勢は明らかに問題です。しかし、ここまで言ってくれると「気持ちいい」というか、すっきりした気分になります(笑)。あまりにもの激しさに、「本当に公式見解なのか?」という噂がネットで出回ったほど。しかし、内容は全くもって正論で、他の状況証拠から考えても、さすがにニセモノということはないと思います。

ただ大きく見れば、アップルは、それ自体、著作権制度に関する巨大な利害関係団体でもあります。レコード会社・著作権管理団体・文化庁連合 vs アップル、という構図は見ていておもしろいのですが、利用者の利益、創作者の利益が、政策に考慮されないという政治的状況を示しているとも言えるでしょう。アップルの出現で、利用者や創作者にとって少なからぬ利益がもたらされる可能性があるにしても、結局のところ、レコード会社とアップルが、限られたパイを奪い合っているのに過ぎないという見方もできるわけです。

そういう意味で著作権問題は、根本的には日本政治をめぐる「国民不在」という問題であり、天下り先の業界団体を最優先して、いきあたりばったりの政策を行う文化庁のせいで、国益が損なわれているという問題だと言うこともできるかもしれません日本の著作権行政、これからどうなるのでしょうか。

アップルジャパン(株)

知的財産戦略本部「知的財産推進計画2006」の見直しに関する意見募集への応募

P102
(4)私的使用複製について結論を得る
に関する意見

[結論]
科学的且つ客観的証拠に基づかない理由に依る私的録音録画補償金制度は即時撤廃すべきである。

理由1
そもそも、著作物の私的複製により著作権者団体は常日頃、文化庁審議会の場等で私的複製により権利侵害を被っている旨を主張しているが、その論には科学的且つ客観的証拠は存在していない。同一家庭内に置いて、その一家族構成員が購入した著作物と全く同一の著作物を更に2 枚3 枚と購入する事は非現実的事象である。当然の事ながら著作物を販売している音楽レーベルは事前に承知していると考えるのが自然であり弁証法的観点からも帰納的である。

即ち、黙示の承認があるのだから私的複製にから更に料金の徴収を図るのは二重課金にあたり著作権者の要求は不合理である。米国ではFirst Sale Doctrine の名の下、著作物は販売した時点で「売り切り」であるとの考えが定着し且つ国際標準となっている。

理由2
そもそも、仮に私的複製により権利侵害を被ったと主張するなら、その全ての原因は複製防止技術を備えていない著作物パッケージを製造販売しているレーベルに有る。自ら製造販売している製品の不備をハードウェア会社に対して責任転嫁するのは無責任且つ自己中心的な姿勢である。よって、もし私的複製に依り権利侵害が行われているとの主張を継続するなら即時に複製防止措置の付いた著作物パッケージを製造販売すべきである。

理由3
2005 年度に開催された私的録音録画補償金制度議論を行った文化庁審議会法制問題小委員会並びに2006 年度から開始した同庁私的録音録画小委員会にて両小委員である、土肥一史氏 一橋大学教授、松田政行氏 青山学院大学教授/ 弁護士が頻繁に補償金制度存続の論理的根拠とする「国際基準」なるもので、WIPO、ベルヌ条約の基準が取り上げられるが、両名氏は事実誤認を繰り返している。そもそも、WIPO に加盟している184 ヶ国の内、補償金制度を携帯機器に対して導入しているのは僅か11 ヶ国つまり、6%に過ぎない。更に、ベルヌ条約批准163 ヶ国の内、僅か7カ国つまり4.3%しかiPod 等の携帯機器に課金していない。依ってもし「国際基準」に日本が合致するのなら約95%の国がとっている「補償金制度廃止」が「国際基準」である。法律家である両名氏が意図的に著作権者団体の意向にそった事実無根の詭弁を弄するのは真摯な著作権行政を審議すべき同場所で不適切であり、国家国民を愚弄する存在であると言わざるを得ない。

上記の事実を事前に承知しながら両名氏を同委員会委員に意図的に任命した文化庁著作権課の責任は重大でありその結果責任を取るべきである。就中その中心的存在であった吉川晃前著作権課長、甲野正道現著作権課長の責任忌避は免れないと考える。

理由4
IFPI(国際レコード産業連盟)の2007 年度Digital Music Report に記載されて居る様に、iPod ユーザーは一般ネットユーザーの3 倍有料コンテンツサイトから毎月コンテンツを購入している。また、同レポートで有料コンテンツサイトを理由する支持理由50%で、これが一番多い理由である。即ち合法サイトでコンテンツ購入要因となっているのが携帯型ハードウェア機器であると明言している。よってiPod 等のハードウェア機器がユーザーの違法コンテンツを流通させるP2P サイトへの流れを防止し有料サイト、即ちiTunes Store 等へと導いていると、レコード産業連盟の総纏め役であるIFPI(国際レコード産業連盟)が報告書で断言している。よって日本レコード協会、日本芸能実演家団体協議会、日本音音楽作家団体協議会、日本民間放送連盟が主張の拠り所にしているiPod 等のハードウェア機器が権利侵害の元凶であるとする意見は事実無根である所か事実は寧ろiPod こそが有料かつ合法的なコンテンツ流通の最強の推進役となっている事実を認識すべきである。自己撞着を生じさせている日本の著作権者団体は非を認め傲慢不遜な主張を即時停止すべきである。著作権者団体の自己中心性こそが日本のコンテンツ流通を阻害し消費者の選択肢を狭小化させ、IT 業界の生産性を棄損している主要因である。

理由5
アップル社のiTunes を通して販売されている楽曲は累計20 億に及び昨年2006 年度だけでも12 億曲を販売した。一日の楽曲販売数は500 万曲に及ぶ。音楽以外にも、音楽ビデオ、TV 番組、映画、オーディオブック、ゲーム、ポッドキャストを販売している。アップル社は世界最大のデジタルコンテンツ流通企業である。iTunes からの売上から世界で最も著作権料を著作権者に納付している企業である。アップル社こそが最もコンテンツ業界に貢献している企業の一つであると自負している。今後は、著作権者、消費者、政府、機器メーカーが共に協力しコンテンツ業界の発展へと貢献出来る事を願う。

[総括]
文化庁著作権課に依る一方的な行政運営には理解不能である。徒に著作権者団体の意見のみを汲取り消費者、機器メーカーの立場は無視し続けている。アップル社を私的録音録画小委員会から閉め出し、欠席裁判で物事も決める閉鎖的な体質を持つ文化庁の典型的な隠蔽体質を良く表している。平成19 年3 月27 日、文化審議会 著作権分科会私的録音録画小委員会にても多くの小委員会委員が補償金制度の必要性の根幹の議論提示をしたにも関わらず、作為的に「私的録音録画問題に関する検討の進め方(案)」から削除するなど鼻から「結論ありき」の審議会運営をする著作権事務局には真摯な姿勢は微塵も感じられず、もはや公平公正な著作権行政を運営する適切な省庁とは言い難く、速やかに著作権行政を他の省庁に移管することを強く望む。

以上

「知的財産推進計画2006」の見直しに関する意見募集に寄せられた意見/首相官邸
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/070531/iken1.pdf

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コメント

おじゃまします。
この提案の方向性には同意しているのですが、(Apple という立場にしては)理由付けが甘いのではないかと考えています。
たとえば、理由1は、レンタルCDという日本独自の制度を考慮していないように思われます。いかがでしょう。

投稿: mohno | 2007/06/14 23:09:07

レンタルについては別に補償金制度があるわけなので、議論の本質と、関係ないのではないかと思います。

ちなみに、「無駄のない議論」「正論」と書きましたが、「全面賛成」と言っているわけではないのは、本文の最後に指摘した通り。私自身何かを「提案」する趣旨ではないので、念のため。

投稿: 情報学ブログ | 2007/06/15 5:14:31

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