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「胡蝶の夢」とシステム論

システム論 | 2009/09/25

「胡蝶の夢」という話を知っているでしょうか。

昔、荘周という者がいた。荘周は、胡蝶になって自在に飛び回る夢を見て、その間は、自分が荘周であることも忘れていた。しかし、荘周が夢から覚めると、やはり荘周のままだった。荘周が夢で胡蝶になったのか、胡蝶が夢で荘周になったのかは分からない。でも、荘周と胡蝶には必ず区別があるはずである。これは物化(万物の変化)というものである。(荘子「斉物論第二」より拙訳)

1. 夢と現実の間

私たちは夢と現実を区別します。通常、夢の方が現実で現実の方が夢だとは考えません。なぜでしょうか。それは、「現実によって夢は説明できるが、夢によって現実は説明できない」ということによると思われます。

たとえば私たちは現実の世界で夢を見ているとき、現実の世界の他の人によって「君は寝ていたね」と言われることがあります。しかし、夢から醒めている間、夢の世界の人から「君は寝ていたね」と言われることはありません。このために、私たちは夢と現実を逆に考えることはないということになります。もし、何度寝ても、前に見た夢の続きが見られて、さらに起きている間も夢の世界が問題なく進行しているとしたら、現実世界とは別に夢の世界があると考えても不思議ではないでしょう。しかし、実際には、こういうことがないため、「荘周が夢で胡蝶になったのか、胡蝶が夢で荘周になったのかは分からない」と考える人があまりいないのです。

2. 夢から醒めた夢

ただ、こうした現実―夢の関係は相対的なものであり、「夢の夢」というようなものを考えると、少し違ったことが分かります。自分が子どものころ、怖い夢を見ながら「これは夢だ。夢だから起きればいい」と思って起きるのだけれど、起きたつもりが結局、同じ夢が続いているということが何度もあったのです。ひどいときには、これが何重にも繰り返されたことがありました。一言で言えば、「夢から醒めた夢」を見ていたわけです。また、夢の中で「このままではおもらしをする。起きよう」と思い、起きてトイレに行くもののどうやっても出ない。あるいは、出したつもりなのに、全然尿意がなくならない。そこで、「あぁ、まだ夢の中なんだな」と気づくという夢を見たこともありました(名誉のために言っておくと、自分は子どものころ、ほとんどおねしょをしたことがなかったようです)。

さて、こうして現実だと思っていたものが、実は「夢から醒めた夢」に過ぎないということがありえるということは、今見ている現実が実は、「夢から醒めた夢」に過ぎないという可能性を<否定できない>ということを意味しています。今、あなたが読んでいるこの文章が、実は夢の世界の文章ではないということを、どうやって証明することができるでしょうか。今見ている世界が実は全て夢であって、突然、夢から醒めて何事もなかったかのように「本当の」現実が続いていく、その可能性を私たちは否定することができないのです。

3. 観察する世界と観察される世界

ただ、このように言うと、ある批判を受けるかもしれません。「私たちが生きている世界では、今いる世界しか見ることができない。それにもかかわらず、その「外側の世界」について議論することができるだろうか」という批判です。

こうした批判をする人は、「観察する世界」と「観察される世界」を混同しているのではないかと思います。私たちは、今見ている現実の世界の中で、「現実の世界」と「夢の世界」の関係を理解しています。ただし、このとき、二つの世界を理解する基準となっている「現実世界」と、理解される側の「現実世界」は同じとは限りません。前者は「観察するものとしての世界」、後者は「観察されたものとしての世界」なのです。ここでは、ある世界が世界そのものを観察する「自己観察」という現象が起きていることが分かります。

すでに、私たちが夢を夢と認識することには、「現実によって夢は説明できるが、夢によって現実は説明できない」という理解が前提になっていることを述べました。このとき、私たちは、「現実の世界」と「夢の世界」の両方を対象として観察していることが分かります。私たちは「現実の世界」から、「現実の世界」を自己観察し、それと同時に「夢の世界」を観察することもできます。ここで、観察された「現実の世界」の側から観察された「夢の世界」を説明できるということが認識されるとき、はじめて「現実―夢」の関係を認識することができるのです。

こうして、現実世界の中で、「現実―夢」の関係を理解することができれば、その一般化として「本当の現実―今見ている現実」という区別が「あるかもしれない」という可能性を理解することもできます。たしかに、私たちは、今いる現実世界の外側に出て、そこから現実世界を眺めることはできません。しかし、現実世界の内部で、現実世界を自己観察するとき、現実世界の外側の問題についても議論することはできるのです。

4. 一貫性としての世界

それでは、「今見ている現実が、本当に現実なのかどうか」はどのように判断できるのでしょうか。結論から言うと、そんな判断はできません。私たちが見ている現実世界は、その現実世界の外側に根拠を持っているものではなく、「あるひとまとまりの一貫性」としか言いようがないものなのです。

今見ている現実は、本当は「夢から醒めた夢」かもしれない。これは論理的に否定することができない命題です。しかし、そうであるにもかかわらず、私たちの世界は「あるひとまとまりの一貫性」を持っています。その一貫性をもとに、自らの世界そのものを自己観察することすらできるのです。「夢の世界」が「あるひとまとまりの一貫性」を持っているのと同じように、「現実世界」も「あるひとまとまりの一貫性」を持っている。このように考えることによって始めて、外部の基準によらないでも「現実世界」が成り立っていることを示せることになります。

こうした理解に基づけば、今私たちが見ている現実の世界が、実は「夢から醒めた夢」であるかもしれないという疑いは、むしろ積極的に受け入れるべきものだということになるでしょう。たしかに、私たちが見ている現実の世界が、実は「夢から醒めた夢」であるかもしれない、つまり、私たちが生きている世界は、外部の何かによって根拠づけられるものではないかもしれない。しかし、それでも私たちの見ている世界は、「あるひとまとまりの一貫性」という意味で成り立っている世界なのです。

5. 再び「胡蝶の夢」

ここで再び、荘子の「胡蝶の夢」に戻ってみることにしましょう。荘子の「荘周が夢で胡蝶になったのか、胡蝶が夢で荘周になったのかは分からない。でも、荘周と胡蝶には必ず区別があるはずである」というテキストにおいて、「荘周が夢で胡蝶になったのか、胡蝶が夢で荘周になったのかは分からない」というのは、一見して分かりづらい要素を持っています。なぜなら、私たちは日常的には、夢と現実を区別しているからです。しかし、ここまでの議論で述べてきたように、夢と現実の区別は所詮、相対的なものに過ぎず、これが現実でこれが夢というようなことを、何の前提もなしに示すことはできないのです。おそらく、荘子が「荘周が夢で胡蝶になったのか、胡蝶が夢で荘周になったのかは分からない」という言葉で言いたかったのは、こういうことではないかと思います。

そうだとすると、「荘周と胡蝶には必ず区別があるはずである」というのは、「あるひとまとまりの一貫性」として成り立っている世界の間の区別を意味していると言うことができるでしょう。

これを元にして考えると、荘子の最後の言葉、「これは物化(万物の変化)というものである」という部分も、「あるひとまとまりの一貫性」の生成消滅、あるいは一貫性のあり方そのものが、「常に変化する」という意味で理解できます。ある人にとっての「世界」は、その人の生死によって生成消滅するのはもちろん、その人がさまざまな考えに触れたり経験をしたりすることによって、新たに生まれたり消えたりするものです。「胡蝶としての世界」「荘周としての世界」いずれも、こうした万物の変化の中で生み出されたものに過ぎません。しかし、「~に過ぎない」のではなく、「まさにそこにある」ことに注目するべきだ。それが、「胡蝶の夢」の譬えが意味していることなのです。

こうして、「あるひとまとまりの一貫性」としての世界という考え方は、システム論、それも特に、観察主体である自らをシステムとして理解するセカンドオーダーサイバネティクスに共通する見方でもあります。また、「~に過ぎない」のではなく、「まさにそこにある」ことに注目するべきだというのも、また、システム論から導かれる結論の一つです。システム論は20世紀になってから成立した議論ですが、それと全く同じ構造がが荘子の中にも見られるということは、非常に興味深いことではないでしょうか。

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